日々のニュースやSNSで、ビジネスに命を懸けるような人を見かけることがあります。誰よりも働き、誰よりも利益を追い求め、時に身体を壊してまで結果を出そうとする。
そんな姿を見て、ただの努力では済まされない「執念」のようなものを感じることがあります。今回は、そうした人の行動を表すのにぴったりな四字熟語「以身殉利」について、意味や使い方をわかりやすく掘り下げてみたいと思います。
以身殉利の意味とは?

「以身殉利(いしんじゅんり)」という四字熟語は、文字通りに読むと「身をもって利益に殉ずる」、つまり「利益のために自分の身を犠牲にすること」という意味になります。
ここで「以身」とは「自分の体・命」を指し、「殉利」の「殉」は「殉職」「殉死」といった言葉にも使われるように、「何かのために命を捧げる」という意味です。つまり、「以身殉利」は「利益のために命を捧げるような姿勢」を象徴的に表しています。
この熟語は、一般的なポジティブな意味合いだけではなく、時には批判的な文脈でも使われます。例えば、金儲けのためなら手段を選ばず、健康や人間関係を顧みずに突き進む姿に対して「以身殉利の典型だ」などと皮肉を込めて言うこともあります。
以身殉利の使い方とは?
では、実際に「以身殉利」という言葉がどのような場面で使われるのか、いくつかの例を挙げてみましょう。
- 会話での使い方
- A:「あの人、最近ほとんど寝ずに働いてるらしいよ」
- B:「本当にすごいね。でもちょっと以身殉利になってない?体が心配だよ」
ここでは、「過度な働き方が利益優先になりすぎているのでは?」という懸念を込めて使われています。
- 文章での使い方
- 「彼は常に目先の数字を追い続け、部下にも同様の姿勢を求めた。その徹底ぶりは、まさに以身殉利の体現者だった。」
このように、ビジネスや経済の文脈で、誰かの姿勢や信念を描写する際に使われることが多いです。
以身殉利をわかりやすく解説
「以身殉利」という姿勢には、一見すると「献身」「努力」「ストイック」といった美徳が込められているように見えます。しかし、その一方で、自己犠牲の先にあるリスクや周囲への影響も無視できません。
たとえば、経営者が利益追求を優先しすぎると、従業員に過剰な負担をかけたり、倫理的な判断が曖昧になったりします。「以身殉利」は時として、「利益の奴隷になること」を意味してしまうのです。
また、家庭を顧みずに仕事に没頭する父親や母親が、子どもとの時間を犠牲にする姿も、広義には「以身殉利」と言えるかもしれません。社会的な成功を得る代償として、何かを手放してしまうという現象は、現代のあらゆる場面で起こっています。
最後に
私自身、若いころは「自分の限界まで頑張ってこそ一人前」と思っていました。目標に向かって突き進む姿勢は確かに大切ですし、結果を出すためには時に自己犠牲も必要かもしれません。
しかし、ふと立ち止まって振り返ったとき、「本当にそれで良かったのか」と自問自答することがあります。健康を害したり、大切な人との時間を失ったりすることで、取り返しのつかない損失が生まれることもあるのです。
「以身殉利」は、目標に向かって突き進む姿勢を讃える一方で、その先にある「犠牲」や「代償」についても私たちに問いかけてきます。この言葉を知ることで、努力と欲望のバランス、仕事と人生の調和を考えるきっかけになるかもしれません。
努力を惜しまず生きることは美しいことです。ただし、その努力が誰かを傷つけたり、自分を壊すものであってはいけない。そう気づかせてくれるのが、「以身殉利」という重みのある四字熟語なのではないかと、私は感じています。



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