日々の生活の中で、私たちは人とやり取りをする場面が数え切れないほどあります。メールや電話、会話やSNSのコメント。そこには必ず「行き来」があり、一方通行では成り立ちません。
そんなやり取りを表すのにぴったりな四字熟語が「一往一来」です。私はこの言葉を初めて知った時、「なるほど、まるで手紙のキャッチボールみたいだな」と感じました。なんとなく柔らかい響きがあって、堅苦しい四字熟語の中でも親しみやすさを覚えるのです。
この言葉は単に物理的な行き来だけでなく、心の交流や意見のやり取りを表すのにも使われます。誰かと会話を重ねる中で「あなたの話を聞いて、自分も返事をする」というリズムが生まれますが、その往復をイメージすると、この熟語の持つ温かみが見えてきます。
一往一来の意味とは?

「一往一来(いちおういちらい)」とは、文字通り「一度行き、一度戻る」という意味です。「往」は行くこと、「来」は来ることを指し、それが一回ずつ行われることを表しています。
これを日常的な表現に置き換えると、「やり取り」や「往復」、「行ったり来たり」といったニュアンスになります。
中国古典や漢詩の中では、馬や使者の行き来を指すこともありましたが、日本語ではより広く、やや抽象的なやり取り全般に使われることが多いです。人と人との意見交換、手紙やメールのやり取り、さらには気持ちの通い合いまでをも含めることがあります。
例えば、ビジネスの交渉でも「一往一来の交渉を経て、合意に至った」と言えば、互いの意見を何度も交換しながら進めた様子が伝わります。つまり、この熟語には単なる往復以上に、「双方向性」という大事な意味が込められているのです。
一往一来の使い方とは?
「一往一来」という言葉は、かしこまった文章や説明文だけでなく、日常会話や趣味の文章にも使えます。使用場面をいくつか挙げると次のようになります。
ビジネスシーンで
例:「一往一来の意見交換を重ねた結果、双方に納得できる契約がまとまりました。」
ここでは、お互いが提案や修正を繰り返した様子を端的に表せます。
学問や議論の場で
例:「討論会では一往一来の論戦が繰り広げられ、聴衆も引き込まれた。」
議論やディスカッションのやり取りを描写するのにぴったりです。
日常生活で
例:「友人との手紙は、一往一来のペースで続いている。」
柔らかい日常表現としても違和感なく使えます。
注意点として、この熟語は一方的なやり取りには使えません。必ず「行く」動作と「戻る」動作の両方があることが前提です。
一往一来わかりやすく解説
もし「一往一来」を身近な例で説明するとしたら、ピンポン(卓球)のラリーを思い浮かべるとわかりやすいでしょう。片方が打ち返し、もう一方が応じる。その一つ一つの返しが「往」と「来」です。これが一回ずつ行われると「一往一来」。
また、古い時代にはこの言葉は「人や物が一度行って戻る」という非常に物理的な意味で使われました。しかし現代では、それが会話や感情の交流にも使われるようになりました。
たとえばSNSのやり取りだって、まさに現代版の「一往一来」です。あなたが投稿し、誰かがコメントを返す。そこから再び自分が返信をする。これも立派な「一往一来」です。
さらに、この熟語には「対等な関係」というニュアンスが少し含まれています。一方的に話すだけではなく、相手の反応があって初めて成立するからです。相手を尊重しながら進めるやり取りこそが、本来の「一往一来」の姿なのかもしれません。
私自身、体調や環境の関係で外出が難しいこともありますが、それでも友人や知人とメッセージを交わすことが日々の楽しみになっています。そこで使われるのは、まさにこの「一往一来」という感覚です。
お互いが時間をかけて返事をする、そのリズムがあるからこそ、関係が続いていくのだと感じます。
最後に
「一往一来」という言葉は、単なる行き来を超えて、心の交流や意見交換の姿をも表す美しい四字熟語です。使いこなせば文章が引き締まり、また温かみのある印象を与えることもできます。
現代はコミュニケーションの形が多様化し、メールやチャット、SNSなどでのやり取りが当たり前になりました。そんな時代だからこそ、「一往一来」という古くからの言葉が、かえって新鮮に響くのではないでしょうか。
会話も文章も、双方向のやり取りがあってこそ豊かになります。この熟語を日常の中で意識すれば、人間関係の質も少しずつ深まっていくはずです。
もし次に誰かとやり取りをしていて、「いい関係だな」と感じたら、その瞬間を「一往一来」と心の中でつぶやいてみてください。きっとその言葉の持つ柔らかさが、あなたの気持ちを少し温かくしてくれるはずです。



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